最近はクロスオーバーが脚光を浴びているが、プレミアムブランドの花形といえば……やっぱりエレガントなクーペやコンバーチブル(ロードスター)。英国高級車の伝統を伝えるジャガーの中で、メルセデスのCLやSL、BMWの6(かつては8)シリーズに対抗するのがXKだ。
ルックスを見ればわかるように、その源流にあるのは20世紀後半を代表するスポーツカーのジャガーEタイプ。そして「XK」のネーミングは、48年のXK120にはじまり、140、150と発展したXKシリーズ(Eタイプのそのまたルーツ)に由来する。由緒の正しさでは、メルセデスSLにだって負けない。
そこで、もう少し詳しく歴史を紐解けば、ラグジュアリー方向に大きく振れたXJ-Sの後継車として、新世代のXKが発表されたのは96年のこと。98年にはスーパーチャージドV8を積むXKRを追加し、ラグジュアリースポーツ市場での存在感をより確固たるものとした。
そして、06年にフルチェンジを実施。「ビューティフル・ファスト・カー」(美しく、速いクルマ)という、ジャガー伝統のブランド哲学を象徴するモデルであるXKシリーズは、一段と魅力を高めて登場した。
内容は変身というより変革。なにしろ、基本をXJ-Sから継承したシャシーに別れを告げ、ニューXJから導入した最先端のアルミモノコックボディを採用したのだから、一気に2世代、3世代の進化を遂げた印象だ。数値で示せば、ボディのねじれ剛性はクーペで31%、コンバーチブルで48%もアップ!
しかも、安全性の大幅強化を図りながら、同時に軽量化までを達成したのだから、ハイテク導入の効果は絶大だ。
次の注目点は美しさ。先代XKも、いかにもジャガーらしい美しく、上品なスタイルを持っていたが、新型はさらにスポーティで、一段と洗練されたフォルムを手に入れた。デザインを担当したのは、アストンマーティンで手腕を振るったあとジャガーに移籍したイアン・カラム。
先祖にあたるEタイプのモチーフを生かしながら、モダンなラグジュアリースポーツに仕立てたデザインディレクターの能力は「さすが!」と言える。低く構えたノーズから、量感あるリヤフェンダーへとつながる面はじつにセクシー。高級スポーツらしい成熟した色気を漂わせる。
加えて、ホイールベース(160mm)やトレッド(前55/後105mm)の拡大も見逃せない。しっかり足を踏ん張るスタンスが、強くて軽いボディ、高度なサスと融合。ダイナミックかつ上質な、新型XKの走りに結実しているというわけだ。
|